2009-01-25(Sun)
戸田誠二『美咲ヶ丘ite』(1)
満足度 : ★★★☆(3.5/5.0)
美咲ヶ丘という、ありふれた町で不器用な日常を送る人々を描いたオムニバス形式、ある種の短編集。
総じて、日々を一生懸命に生きる市民の物語。挫折や紆余曲折を経ながらも、最終的には救われるという形で話は収束していく。しかし、一時的には“収束”しても人生は続く。そんな、日常。
描き方がとても人間臭い。浮気・不倫における葛藤や会社内での立場、結婚を目の前にして自身が本当にやりたいことと出会ってしまったという葛藤、ダメ男に依存して自身まで落ちていく女性、人生の分岐点から仕事に没頭にすることで逃れようとする人、と扱う題材は多彩で一部を除いてあまりに日常的。それ故、普段何気なく見落としてしまっているようなことを気付かせてくれる好作。
確かに“当たり前”であることは奇跡だと言う点には同意できるものの、話として綺麗にまとまりすぎている点が逆に引っ掛かるような印象も。
性悪説に立つわけではないが、世の中には各話の“主人公”を理解してくれる人ばかりではない。紆余曲折の過程で生まれた汚いものを噛み砕き、飲み込める人ばかりでもないのだ。そういった意味では違和感を感じなくはない。
とは言え、読み終えて感動に至るには十分な佳作。
日常モノが好きな方、ありきたりな日常になんらかの意味を見出したい人、日々をより大切に過ごしたいと言う方には特にオススメしたい作品。
=なぉ=
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